
市街化調整区域では、原則として建物を建築することができません。
そのため、農業後継者がいないなどの理由で、将来的な土地の管理にお困りの土地オーナー様もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、市街化調整区域で行う土地活用について、実現可能な土地活用の種類や、必要な手続きなどについて解説します。
目次
市街化調整区域とは

市街化調整区域とは、都市計画法に基づき、無秩序な市街化を抑制するため、建築物の新築や増築を極力抑えるよう定められた区域のことを指します。都市計画法で定める都市計画区域は、建物の建築が可能な「市街化区域」と、建物の建築が著しく制限される「市街化調整区域」に区域区分されています。
しかし、自治体の中にはこうした区域区分がされていないこともあり、「市街化区域」と「市街化調整区域」を区切る線引きがされていない都市計画区域を、「非線引き区域」と呼びます。
市街化調整区域で土地活用する場合、「建物の建設が不要な土地活用」をするか、「許可を得て建物を建設する土地活用」するかの2つの方法に制限されます。
都市計画区域については、各市区町村のホームページや市役所などに問合せて調べることができます。
スクロールしてご覧下さい
都市計画区域 | 特徴 |
---|---|
市街化区域 | すでに市街地を形成している区域と、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とされています。 建物の建設が可能な区域です。 |
市街化調整区域 | 市街化を「抑制」する区域。基本的に建物の建設は認められていません。 ※特別に許可を得れば建物の建設が可能 |
非線引き区域 | 「都市計画区域内」で市街化区域にも市街化調整区域にも当てはまらない区域。基本的には建物の建設が可能です。 |
市街化調整区域内でできる
土地活用5選
市街化調整区域では、基本的に建物を建築することはできません。
そのため、建物を建築しない土地活用の方法を検討する必要があります(ただし、自治体によって建築可能な場合もあります。後述)。
また、市街化調整区域に立地する土地の大半は農地であり、基本的に農地は、農業以外の用途で使用することができません。
農地を農地以外の方法で土地活用をするためには、後述する「農地転用」の手続きが必要となります。
市街化調整区域で行う土地活用には、以下の5つが挙げられます。
土地活用の方法 》
- 【1】貸し農園
- 【2】駐車場経営
- 【3】資材置き場
- 【4】沿道サービス施設
- 【5】その他の土地活用
【1】貸し農園
市街化調整区域に位置する土地の大半は農地と言えます。
農地を農地のまま活用する方法として、貸し農園という土地活用方法があります。
貸し農園は、耕作を行う近隣の農家や、農業を行う事業者に一括で貸し出す方法と、土地を区分けして複数人に農地を貸し出す(区画貸し)方法があります。
また、農地バンク(※)に登録する方法もあります。
※正式名称を「農地中間管理機構」と言い、2014年度に全都道府県に設置された、農地を貸したい人と借りたい人をマッチングする仕組みのこと。
農地を貸し出す際には、「市民農園整備促進法」や「特定農地貸付法」に基づき、自治体ごとにルールが決められているため、地元の農業委員会などに相談する必要があります。
収益性はあまり期待できませんが、土地が荒れてしまうことを防ぐことはできます。
【2】駐車場経営
市街化調整区域であっても、近くにバスターミナルなどがあり、駐車場需要が見込める場合は、コインパーキングなどの駐車場経営が可能です。
ただし、駐車場経営を行うためには、土地の地目が「宅地」か「雑種地」である必要があり、地目が「畑」や「田」などの農地の場合は、駐車場経営を行うことはできません。
【3】資材置き場
資材置き場は、市街化調整区域に位置することが多く、むしろ市街化区域では行うことが難しい土地活用の方法と言えます。
資材置き場は、文字通り土地を借りた事業者が一時的に土や砂、建築部材などの資材を置いておくために使用するため、大型トラックなどの出入りによる騒音などが発生するためです。
大型車両が出入りすることになるため、資材置き場には、「前面道路が広い」、「土地が平坦」、「高速道路や主要幹線道路へのアクセスが良い」などの条件を満たしている土地が向いていると言えます。また、駐車場同様、地目が農地の場合、資材置き場にすることはできません。
【4】沿道サービス施設
市街化調整区域であっても、国道、県道または幅員12メートル以上の道路に接しているなどの、都市計画法第34条9号の基準を満たす土地であれば、コンビニエンスストアや、ドライブイン(飲食物を提供し、自動車運転者等が休憩できる施設)の建築ができる可能性があります。
ただし、こちらも地目が農地の場合は、施設を建築することはできません。
【5】その他の土地活用
市街化調整区域における土地活用は、個別に自治体の許可を受けて実施するのが基本です。
そのため、市街化調整区域に土地を所有されている場合、自治体の「都市計画課」などを訪ねて、ご所有地ではどのような土地活用が可能であるのかを、直接確認することをお勧めします。
関連法を独自に調べたとしても、確証を得ることは難しいため、直接聞くのが一番です。
自治体により、担当部署の名称が異なるため、まずは受付に要件を伝えて、担当部署に案内してもらうのが良いでしょう。
例えば、千葉県などでは時限立法である「40戸れんたん制度」が現在も残っています。
これは、簡単に言うと、市街化調整区域であっても、一定の要件を満たせば住宅等の建築が可能となる制度です。
この条件を満たせば、アパートや賃貸マンションを建築することもできるということになります。
ただし、法的に建築可能であることと、アパート経営が成功するか否かは別問題であるため、自治体が定める建築の条件とは別に、経営目線での市場調査を行うことが、土地活用を検討する場合には必須と言えます。
市街化調整区域内で
開発許可を受ける
手続きの方法と調べ方
市街化調整区域の土地を活用するためには、開発の申請をして、都道府県知事などの許可を得る必要があります。
申請の流れは、下記のようになります。実際には、所轄の市区町村に確認を取りながら進めるようにして下さい。
開発許可を得るまでの流れ 》
- ❶自治体へ相談
- ❷土地活用のプランを設計する
- ❸開発審査会へ申請(開発許可の申請)
- ❹開発許可
❶自治体へ相談
まずは、市役所などの所轄の自治体に、ご所有地に建物を建築することが可能かどうかを確認しましょう。
そして、建築が可能な場合、どのような用途の建物であれば建築が可能かを確認しましょう。
市街化調整区域で建築可能な建物は、主に下記の考え方に基づいて許可されます。
厳密には開発審査会によって決定がなされますが、許可が下りるか否かの大まかな見込については、自治体の担当者(都市計画課等、自治体により名称は異なる)から確認しましょう。その上で、開発申請に必要な書類などを確認するようにしましょう。
建築が許可される建物の要件 》
- ・公益上必要な建物
- ・地域産業上必要な建物
- ・市街化区域内で建設できない物
- ・市街化区域内で建設が困難・不適切な物
- ・土地所有者が自分で使う建物
❷土地活用のプランを設計する
建物が建築できる見込みや、開発申請の方法が確認できたら、土地活用の具体的なプランを設計します。
開発申請をする際には、建築する建物の平面図や立面図などの、具体的な資料が必要となるためです。また、自治体や建築する建物の種類により、所轄の水利組合などの排水を管理する機関や、近隣住民の合意を必要とする場合もあります。
❸開発審査会へ申請(開発許可の申請)
申請書類一式が整ったら、開発申請を行います。開発審査会の審査は、1ヵ月のうち決まった日にちに行われることになっていることが多いため、申請してから回答が得られるまでは、1ヵ月から2ヵ月の期間を見ておく必要があります。
規定されたルールに基づいて申請を行えば、ルール通りに建築許可は下りるはずです。
❹開発許可
開発申請に、都道府県知事や特定市の長などの許可権者の許可がおりたら、開発許可通知書が発行されます。
市街化調整区域の開発申請には、公図や位置図(住宅地図のコピーなど)、登記簿謄本をはじめとした、膨大な書類が必要であり、これを揃えるだけでも大変です。
また、規定された開発条件に則り、正しく許可を得るためにも、土地活用のプロに相談することをお勧めします。
市街化調整区域内における
農地転用の方法と調べ方

市街化区域内で農地転用を行う場合は、所轄の自治体に届け出るだけで済みますが、市街化調整区域で農地転用を行う場合は、都道府県知事の許可(※)が必要となります。
※4ヘクタールを超える場合は農林水産大臣の許可
さらに、市街化調整区域の農地には、「転用できる農地」と「転用できない農地」があります。こうした「農地区分」をはじめ、「立地基準」、「一般基準」に照らして、農地転用が可能か否かが決まります。
そのため、市街化調整区域の農地の場合、農地以外の土地活用が可能かどうか、ひとつひとつ、情報を確認していく必要があります。
i)転用可能な農地かどうか、農地区分を確認する
一言で農地と言っても、法的には様々な種類に区分されています。具体的には、「農用地区域内農地」、「甲種農地」、「第1種農地」、「第2種農地」、「第3種農地」の5種類です。
このうち、原則として農地転用が認められるのは「第3種農地」です。また、一定の条件を満たす「第2種農地」も、農地転用の許可を受けることができます。
その他の農地については、原則として農地転用することはできません(例外許可はあります)ので、まずはここを確認しましょう。
農地区分については、所轄の市役所や農業委員会で確認することができます。
ii)立地基準を確認する
農地が「第2種農地」であった場合、立地基準を確認します。
例えば、10ヘクタール以上の一団の農地の一部と判断される場合などは、農地転用の許可を受けることはできません。また、市街地や「第3種農地」に、同様の土地活用が可能な土地を所有している場合も、農地転用の許可を受けることは難しくなります。
これらの「立地基準」についても、「農地区分」と合わせて、所轄の市役所や農業委員会などで確認しましょう。
iii)一般基準を満たす土地活用のプランを設計する
農地転用の「一般基準」には、転用の確実性(本当に申請通りの土地活用が可能なのか)が求められます。
例えば賃貸マンション・アパート経営であれば、建物の配置図や立面図を含めた、工事の契約書などの、計画が実現可能であることを証明できる書類を揃えて提出する必要がある訳です。
また、周辺の農地に悪影響がないことや、十分な被害防除措置が取られていることも証明する必要があります。
「一般基準」についての対応は、土地活用のプロに任せるようにしましょう。
iv)農地転用の許可
農地転用について、都道府県知事などから許可が得られたら、農地転用許可の通知書が発行されます。農地転用の申請から許可通知までは、概ね1ヵ月ほどの期間を要します。
- 開発申請と農地転用
-
開発申請の許可を得るには、開発が可能であるというエビデンス(証拠・証言)として、農地転用の許可が下りている必要があります。
一方、農地転用の許可を得るためにも、転用の確実性を示すエビデンスとして、開発許可が下りていることが必要になります。そのため、開発申請と農地転用の申請は、同時並行して進めていくことになります。
こうなってくると、いよいよややこしい話になってきます。また、市街化調整区域農地の活用は、自治体によって考え方が異なります。例えば、市街化調整区域の農地が商業施設に変われば、土地が農地から宅地や雑種地に変わり、固定資産税の税収が増加しますし、住民が自ら地域経済に寄与してくれるというメリットがある反面、自治体の進める都市計画からすると、ノイズ(雑音・騒音)となるデメリットもあります。
そのため、ある自治体ではすんなりと農地転用ができるのに、ある自治体では簡単には農地転用の許可が下りない、ということもあります。
地域に密着した土地活用のプロであれば、その辺りの感覚は経験として身に付けています。また、土地オーナー様のご要望や土地の条件などの要点をまとめ、具体的な計画を立案したり、手助けが必要な専門家への橋渡しを行ったりといった役割を担うこともできます。
まずは土地活用のプロに相談してみましょう。
土地活用に関することなら、東建コーポレーションまでご相談下さい

冒頭でも触れた通り、自治体が都市計画を進める上では、住宅や商業施設などが無秩序に広がり、都市機能や生活環境が低下することは防がなければなりません。そのために、建物を建てられる地域と建てられない地域を線引きした結果、建物の建築が著しく制限された区域が、市街化調整区域です。
しかし、その中には例外として、土地活用に適した土地や、町の発展によって、土地活用に適した立地に変わった土地も含まれていることがあります。
ご自身の土地を見て、この土地ならきっと有効活用できるのに、市街化調整区域だから無理だ、とあきらめてしまっている方がいらっしゃいましたら、ぜひ、東建コーポレーションまでご相談下さい。