
この記事では、シェアサイクル事業による土地活用について解説します。
近年では、CO2削減への意識の高まりや、外国人観光客の増加等を背景に、シェアサイクルの市場が急拡大しています。
シェアサイクルとは、街に複数存在しているシェアサイクルポートに設置された自転車を、利用者同士でシェアするタイプの貸し自転車です。
シェアサイクルの導入は、都市の回遊性向上による賑わいの創出や、自動車流入の抑制と公共交通機関の利用促進、放置自転車の減少などの効果も見込めることから、積極的に導入を促進している自治体も多く、参入する土地所有者様も増えています。
シェアサイクルの事業による土地活用にはどんな特徴があり、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?詳しく解説していきます。
目次
1.土地活用で行うシェアサイクル事業とは
土地活用で行うシェアサイクル事業とは、土地をシェアサイクルの運営会社に貸し出し、賃料収入を得る事業です。
ただし、シェアサイクル事業による土地活用は、1人の土地所有者様が単独で行うことはできません。地域に複数存在するシェアサイクルポートの間で行われる、自転車のレンタルと返却の循環に、自分も参加するという形になります。
シェアサイクル事業は、シェアサイクルポートとして運営会社に土地を貸すだけの土地活用であり、運営に必要な業務はすべて運営会社が行います。
そのため、土地所有者様が行うことは基本的にありません。

1-1.シェアサイクル事業の仕組み
シェアサイクル事業は、複数の土地所有者様が運営会社に土地を貸し出すことで、地域に一定数のシェアサイクルポートが設置されて初めて成立する事業です。
シェアサイクルの利用者様は、地域に複数あるポートの中から、好きなポートで自転車を借り、好きなポートに返すことができます。
この利便性の高さが、シェアサイクル事業の強みと言えます。

シェアサイクル事業を運営していくために必要な業務としては、シェアサイクルのメンテナンスやポートの整備をはじめ、利用者様からのお問い合わせや、クレームなどの対応をするコールセンター業務などがあります。
その中でも、特に重要かつ重労働となるのが、シェアサイクルを再配置する業務です。
これは、地域のシェアサイクルポートの自転車を、人海戦術で再配置する作業のことです。
シェアサイクルは、自転車を借りるポートも返すポートも自由なところが利点ですが、時間の経過と共に自転車が一部のポートに偏ってきます。
例えば、朝の通勤時間帯には、駅から離れたポートで自転車を借りて、駅に近いポートに自転車を返す人が多いです。このように、利用者様の自由に任せているだけでは、どうしても自転車が一部のポートに偏ってしまうのです。
こうした偏りを是正するため、運営会社は、毎日自転車をトラック等で運んで、各ポートに再配置する作業を行っています。
自転車の再配置業務もシェアサイクルの運営会社が行うため、土地所有者様が行う必要はありません。しかし、運営会社側に多くの人件費がかかるため、その分、土地所有者様の収益性は低くなります。
1-2.シェアサイクルとレンタサイクルの違い

シェアサイクルと似たサービスに、レンタサイクルがあります。
シェアサイクルは複数の場所にあるサイクルポートから、任意のポートで自転車を借りて、別のポートに自転車を返却できます。
一方、レンタサイクルでは、自転車を借りる場所と返す場所が同じ方式です。
このことから、シェアサイクル事業は地域に複数のシェアサイクルポートがないと成立しないのに対し、レンタサイクルはひとつのサイクルポートだけで成立する点が違いです。
この違いから、シェアサイクルは、主に日常生活の中で利用されることが多く、レンタサイクルは観光地や、施設の敷地内等に限定する形で利用されることが多いです。
2.シェアサイクル事業で土地活用をする
メリット

この章では、シェアサイクル事業で土地活用をするメリットについて解説します。
2-1.余った土地を利用できる
シェアサイクルで土地活用を行うメリットのひとつは、余った土地を有効に活用できる点です。
狭い土地や細長い土地だけでなく、敷地の中で余ってしまっている部分など、軒下程度のスペースでも活用することができます。
既に貸店舗経営や貸事務所経営などの土地活用を行っている場合でも、収益化ができていないスペースがあれば、シェアサイクルポートにして収入のアップに繋げることを検討する価値はあると言えます。
自転車が数台置けるスペースがあれば可能な土地活用が、シェアサイクル事業です。

2-2.初期費用が掛からない
初期費用が掛からない点も、シェアサイクル事業で土地活用を行うメリットです。
利用者様がシェアする自転車や必要な設備はすべて運営会社が用意し、シェアサイクルポートの設置工事も運営会社が行うため、土地所有者様には初期費用が発生しません。
2-3.賃貸物件に付加価値を付けることができる
シェアサイクル事業による土地活用には、賃貸物件に付加価値を付けることができるメリットもあります。
例えば、貸店舗経営をしている場合、敷地の余剰スペースにシェアサイクルポートを設置することで、シェアサイクルの利用者様が、貸店舗に立ち寄る可能性が生まれます。
この場合、貸店舗オーナー様はシェアサイクル事業により収益を増やしつつ、貸店舗への集客効果を得ることができます。
貸店舗に入居しているテナントの店舗経営をサポートすることができるため、テナントの退去や、テナントから賃料の値下げ交渉を受けるリスクを軽減できます。
また、貸事務所経営やシェアオフィス経営などワーキングスペースを貸し出すタイプの土地活用との併用で、オフィスで働く人達が通勤や営業回り等で利用できるという付加価値を付けることができます。
3.シェアサイクル事業で土地活用をする
デメリット

シェアサイクル事業による土地活用を行うデメリットを解説します。
3-1.収入が不安定
シェアサイクル事業による土地活用は、収入が不安定というデメリットがあります。
シェアサイクル事業による収益は、シェアサイクルの運営会社から支払われますが、支払われる賃料は固定ではなく、売上に応じて変動する形式が一般的です。
アパート経営で得られる家賃のように固定の賃料収入が見込めるわけではないため、毎月の収益にはバラつきが出ます。
3-2.収益性が低い
シェアサイクル事業による土地活用のデメリットには、収益性が低い点も挙げられます。
シェアサイクル事業による収益は、利用者様から得た利用料から、運営会社の管理費用を差し引いた残額が、土地所有者様に振り込まれる形です。
シェアサイクル事業には、運営会社に自転車の再配置をはじめとした様々な業務が求められることから、相応の人件費がかかります。
これにより、最終的に土地所有者様に配分される利益も少なくなるため、収益性が低い事業となっています。
3-3.住宅の余剰敷地には適さない
シェアサイクル事業による土地活用は、住宅の余剰敷地には適さないというデメリットもあります。
シェアサイクルは、不特定多数の人が利用するサービスです。
そのため、不特定多数の人を多く集めたい店舗などの余剰敷地であれば、人を集める効果が期待できるシェアサイクル事業を行うメリットがあります。
一方で、自宅や賃貸住宅の敷地内にシェアサイクルポートを設置すると、そこに住む人とは無関係な不特定多数の人が敷地に入ることになり、閑静な住環境やセキュリティーが脅かされる可能性があります。
そのため、自宅や賃貸住宅の余剰敷地には、基本的にシェアサイクル事業は適しません。
設置を検討する場合は、住人の生活動線とは明確に切り離された位置に設置するようにしましょう。
4.シェアサイクル事業に適した土地の条件

シェアサイクル事業で土地活用を行うのに適した土地の条件について解説します。
4-1.シェアサイクル事業に適した「地域」
シェアサイクル事業による土地活用を行うには、まず対象の土地がシェアサイクルの普及している街の中にあることが前提条件です。
シェアサイクルは、任意のシェアサイクルポートで借りたり返したりすることができる利便性が強みのサービスです。そして、単体のシェアサイクルポートだけでは、そもそもシェアサイクル事業は成立しません。
そのため、シェアサイクル事業による土地活用は、既に街の中にシェアサイクルが普及しており、新たなシェアサイクルポートが必要な場合にのみ、選択できる土地活用方法ということになります。
なお、シェアサイクルが普及している街は、都市部や観光地であることが多いです。
4-2.シェアサイクル事業に適した「立地」
シェアサイクル事業は、一定の視認性があり、駅近やオフィス街、人気のショッピング施設などの近くであれば有利と言えますが、特別な好立地は必要としません。
シェアサイクル事業は、都市の生活利便性を高める効果が見込めると考えられており、国土交通省が令和6年3月に公表した「公共交通とシェアサイクル」によると、シェアサイクルの本格導入都市数は、令和4年度末時点で305都市とされています。

出典:国土交通省「公共交通とシェアサイクル」
シェアサイクルポートは、特定の位置に求められるものと言うより、都市のエリア内にまんべんなく設置されている状況が望ましい設備と言えます。
4-3.シェアサイクル事業に適した「土地」
シェアサイクル事業による土地活用は、狭小地や、既に何らかの用途で使用している土地の余ったスペースなどに向いています。
シェアサイクル事業による土地活用は、基本的に大きな面積を必要としません。また、収益性が低いだけでなく、節税効果もないため、まとまった広さの土地1枚を活用するには適していません。
何の用途もなく余らせているスペースが「もったいないな」と感じたときに、選択肢に入る土地活用方法と言えます。
5.シェアサイクル事業で土地活用を始める流れ

シェアサイクル事業で土地活用を始める流れについて解説します。
5-1.シェアサイクルの運営会社に問い合わせをする
シェアサイクル事業による土地活用を始める場合、まずはシェアサイクルの運営会社に、ご所有地でシェアサイクル事業を行いたいという問い合わせを行います。
5-2.運営会社による現地確認
シェアサイクルの運営会社に問い合わせをすると、運営会社が現地調査を行います。
周辺のシェアサイクルポートの分布や利用状況から需要の有無を確認し、設置するポートの台数やレイアウトを検討します。
5-3.契約の締結
運営会社が、シェアサイクルポートの設置を可能と判断すれば、土地所有者様と運営会社で、シェアサイクル事業に参加するための契約を締結します。
5-4.シェアサイクルポートの設置工事
契約の締結後は、運営会社の費用負担でシェアサイクルポートの設置工事を行い、ポートに自転車を設置して完成となります。工事の際に、シェアサイクルのPR看板等を設置することもあります。
5-5.運用開始
シェアサイクルポートの設置が完了したら、運用開始です。
問い合わせから運用開始までの必要期間は、早くて概ね10日程度が目安となります。
6.シェアサイクル事業による土地活用 まとめ

以上、シェアサイクル事業による土地活用について解説してきました。
シェアサイクルとは、一定のエリア内に配置された複数のシェアサイクルポートにおいて、自転車を自由に借りたり返却したりできる交通手段のことです。
土地活用でシェアサイクル事業を行うメリットには、「余った土地を利用できる」や「初期費用が掛からない」、「物件に付加価値を付けることができる」が挙げられます。
その反面、デメリットとしては、「収入が不安定」や「収益性が低い」、「住宅の余剰敷地には適さない」があります。
シェアサイクル事業による土地活用は、余った土地を持ち、もったいないとお考えの方や、地域の発展に少しでも貢献したいとお考えの方にとっては、検討の余地がある土地活用方法と言えるでしょう。
一方、シェアサイクル事業は、まとまった広さの土地を有効活用する方法としては、適切とは言えません。
まとまった広さの土地を有効活用するのであれば、賃貸マンション経営やアパート経営、貸店舗経営などの賃貸経営がおすすめです。
有効活用ができていない土地が気になる方や、賃貸経営にご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ、東建コーポレーションまでご相談ください。